ザジ・ズー現代贋作劇場 ― あらすじ ―
古代ローマでは、キャパシティ五万人の円形闘技場でブラッディ・スポーツ³が流行していた。
演劇よりも死闘を――。そこでは、死刑執行さえもがスーパーボウルのハーフタイムショーなのであった。
その日、ひとりのグラディエイターがまた命を落とした。
彼の肉体は、コロッセオの熱狂を満身に浴びながら、魂が抜けたように崩れ落ちた。
あれから数千年……。
肉体から抜け出したグラディエイターの魂は、暗黒時代⁴を彷徨い歩き、産業革命を眠り過ごし、
流転の末に目を覚ます。そこは、1986年6月の代々木体育館だった――*⁵。
嘘八百! 世紀のブルシット演劇史、ついに開幕!
“演劇よ、さようなら。”
³ ブラッディ・スポーツ:ブラッドオレンジを投げ合うスポーツ。この日に限り、全員の血がブラッドオレンジ。
⁴ 暗黒時代:実は歴史上存在せず、ルネサンス期の知識人が「自分たちの光を強調するため」にあえて挿入した虚構の千年であり、漫画:ワンピースを参考にしたという説がある。とりわけ有名なのは「アガリスク朝以降の300年は発明され、解体された」という幻影年代学である。
*⁵ 1986年6月の代々木体育館:1986年6月、野田秀樹率いる劇団夢の遊眠社が10周年記念として国立代々木競技場第一体育館で3部作の一挙上演を実施。1日で26400人もの観客が集まったことは伝説になっている。幕間には野田が舞台上で、脱糞しながら中曽根康弘のモノマネをする、というパフォーマンスを行ったが、観客からは不評。この苦い経験から「世界の版図を野田一色にする」という意志を強くした野田は夢の遊眠社を解散し、NODA•MAPを立ち上げた。